リハビリ患者のモチベーションを上げるコツは?

「リハビリのために声をかけてもなかなかベットから出てきてくれない」「しぶしぶ参加はしてくれるものの、ただ座っているだけなのでリハビリとしての効果が見えない」このように患者のモチベーションが低いことによって、リハビリが一向に進まず頭を抱えている作業療法士の人もいるでしょう。

病院はリハビリを行える期間も決められているため、このような状態が続くと「自宅に帰れるような状態ではないのに、自宅に帰ってもらわなければいけない」ということにもなりかねません。

そこで今回はそのようなことを防ぐためにも、どうすれば患者のモチベーションを上げることができるのか見ていきます。

すでにリハビリを頑張っている人にも効果アリ

実はリハビリに対するモチベーションを上げることは、リハビリに積極的ではない患者だけではなく、すでにリハビリを頑張っている患者に対しても効果があります。自主的な訓練や、リハビリに対してさらなる積極性が見られるようになり、予定よりも早く退院できることにもつながります。

それでは次の章から、モチベーションアップのための方法を挙げていきます。「すでに頑張っている患者に対しても使える方法はないか」という目線で見ていくようにしてください。

モチベーションを上げる8つの方法


患者のモチベーションを上げるためには様々な方法があります。中でも、すぐに効果が見えるモチベーションアップの方法には次のようなものがあります。

目標を立てる

まずは、目標を立てることでリハビリに対するモチベーションが上がる可能性があります。しかし適当に立てていたのでは、その効果はほとんど見えません。目標を立てるときには次のことに注意しながら立てましょう。

細かい目標を立てる

目標は細かく立てましょう。人は、あまりにも先の目標になるとそこにたどり着くまでの道すじをイメージできず、行動する気が起きません。実際にリハビリの計画書を作る時は数ヶ月先の目標を立てることになると思いますが、患者にはそれとは別に、1週間後や2週間後の目標を決めて伝えておくとモチベーションが上がりやすくなります。

達成ラインは具体的に

人は目標を達成したときだけではなく「これなら達成できそう」と感じるだけでも、やる気の素であるドーパミンが放出されます。しかし人の脳は、曖昧な物事を理解することが難しいです。例えば「少しだけでも歩けるようになりましょう」と言われても、結局どれだけ歩ければ目標達成になるのか脳は理解できず、やる気が生じません。

しかし「まずは3歩、歩けるようになりましょう」と言われると「3歩だけならいける」と理解できるようになり、ドーパミンが放出されてやる気につながります。このように目標を提示する時は、数字を入れたりして達成ラインを具体的にしましょう。

達成度を可視化する

リハビリは毎日コツコツと進めていくものなので、毎日その効果を感じられるようなものではありません。そうなるとなかなか効果を実感できないので、患者の中で「リハビリをやっても効果がない」と感じるようになり、それがリハビリに対する意欲低下の原因になっている可能性もあります。

この状態を脱するためには、目標に到達するまでに行わなければいけないことを紙などに書き出しておき、それらを達成するたびに一つずつ塗りつぶしていきましょう。こうすることで目標に向かって確実に進んでいると実感できるようになり、やる気アップにもつながります。

リハビリに好きなことを取り入れる

作業療法士のリハビリでは、ゲームや創作活動など様々なことをリハビリとして行うことができます。なので患者が以前好きだったようなこともリハビリとして行うことができるので、そのようなことを取り入れることで高い効果が見込めます。

では、そのような趣味を持っていないような人に対してはこの方法は使えないのでしょうか。実はあまり趣味を持っていないような人でも、ついつい夢中になってしまうことがあります。

仕事や趣味に関連した作業

趣味がない人に対しては、その人が得意になれることを作業療法に取り入れましょう。趣味がないのに得意になれることと言えば、そう仕事です。人によっては長年続けてきた仕事があります。

例えば畑仕事を長年仕事としてやってきた人は、趣味ではないとしても数多くの畑作業に関する知識を持っています。いざやってみるとプロとしてのプライドか、ついつい積極的になってしまう人は少なくありません。

へりくだってお願いする

しかし中には、上で挙げたようなことを試してみても、作業に参加したがらない人もいるかもしれませんね。このようなタイプの人には次のようにお願いしてみましょう。

「〇〇さんが以前この作業に関連した仕事をやっていたと聞きました。わからないところがあるので教えてほしいのですが…」このようにへりくだった形で聞くことで「必要とされている」と感じてもらえます。得意気になって作業に参加し、教えてくれるでしょう。

患者のことをよく知る

患者との信頼関係ができていれば、リハビリの誘いにも快く乗ってくれるようになります。その信頼関係を築くためにはまずは患者のことをよく知らなければいけません。

過去の情報を積極的に集める

どのような些細なことでも良いので、患者の情報を積極的に集めます。カルテからはもちろん、独自に家族や面会者、本人からいろいろ話を聞いても良いでしょう。

通点を見つけて、話題を振る

情報を集めたら、その中から自分自身も詳しいことについて積極的に話を振ってみます。共通した話題があると自然に仲間意識が生まれやすくなり、リハビリの誘いにもスムーズに乗ってくれるようになります。

同じ空間にいる時間を伸ばす

人は自らの周りに、他人に入られると不快に感じるパーソナルスペースというものを無意識に設けています。スペース内に入られる時間が短時間であれば不快に感じますが、長時間になると逆に警戒心が解けていきます。

そうすれば自然と信頼関係も結びやすくなり、リハビリの声掛けにも応じてもらい易くなるでしょう。そこで次のような方法でパーソナルスペース内に入る機会と時間を増やしていきます。

世間話だけで終わってもOK

リハビリの誘いを断られたら、すぐに立ち去ってしまっていませんか?せっかくパーソナルスペースに入る機会を得たのですから、このような時には5分程度でもいいので世間話をする機会を設けましょう。「そういえば、お昼ご飯は全部食べられましたか?朝食は残されていたようなので…」と些細なことでも大丈夫です。

何か理由をつけて、積極的に顔を出す

信頼関係を作るためには、とにかく接触回数を増やさなくてはいけません。なので何かと理由をつけて積極的に顔を出すようにしましょう。「たまたま近くに寄ったから」「なんとなく気になったから」などとわざとらしい内容でも構いません。

仲間を作る

リハビリを嫌がる人の中には「うまくみんなの輪に入れないから行きたくない」と言う人もいます。そのような人は一人でも仲間ができると、今度は打って変わってどんどんリハビリに参加したがります。ではどのようにして仲間を作れば良いのでしょうか。

他のリハビリ患者との架け橋になる

上記のような理由でリハビリを嫌がる人は、他人に自ら話しかけたりすることが苦手な人がいます。なのであなた自身が他のリハビリ患者との架け橋となり、話題を振ったり、ゲームの時にチームを組ませたりしてみましょう。

少人数での集団リハビリ

大人数よりも3~4人程度の少人数でリハビリを行った方が、同じグループの人を意識しやすくなります。またこのグループを組むときには、必ず社交的な人を1人入れるようにしてください。

こうすることで他人に自ら話しかけることが苦手な人がいても、相手から話しかけてきてくれるので、そこにコミニケーションが生まれます。そしてそこから仲間意識が生まれてくれれば、次回からも積極的に参加してくれるようになるでしょう。

褒める

人は誰しも怒られるより褒められたほうが嬉しいです。リハビリのモチベーションが上がらない人の中には、このように褒められることによってモチベーションが上がる人もいます。褒め方を工夫すれば、さらに効果は上がります。

第三者の声を届ける

「あなたの絵は上手です」

「みんながあなたの絵が上手と言っていました」

不思議なことに後者の方が言われたときに嬉しいと感じませんか?このように、人は第三者から褒められていることを伝えると、それを信じ込み嬉しくなります。あからさまな嘘はいけませんが、ほんの些細なことでも褒めることができるものがあれば、このような形でモチベーションアップを図ってみましょう。

ゲームなどでは表彰する

作業療法の中ではゲームをすることもあります。この時には必ず優勝チームを表彰しましょう。できればメダル等、形として残る物もプレゼントします。こうすることによって表彰されたチームの人たちはもちろん、表彰されなかったチームも「次こそ表彰されたい」と思わせることができ、モチベーションアップにつながります。

役に立っている・必要とされていることを知ってもらう

リハビリが必要な人の中には、不自由になってしまった体に対して落ち込み「自分は役に立たない」と考えている人もいます。そうなるとリハビリをする必要性もわからなくなってしまい、リハビリのモチベーションは上がりません。そのような人には次のような対応が必要です。

自分の喜びを積極的に伝える

もし仮に、その人がリハビリに参加してくれたのであれば「○○さんが作業に参加してくれてとてもうれしいです」「○○さんが頑張ってくれるので私も頑張る気になります」などと、あなた自身の喜びを言葉にして伝えて下さい。

「自分がリハビリを頑張ることで、他人に元気を与えることができる」と思ってもらうことができます。モチベーションアップを図れることに加えて、信頼関係も築き易くなるなどのメリットもあります。

家族や友人などにも積極的な面会をお願いする

体が不自由になってしまったことによって、自分の存在意義を常に自問自答している患者もいます。そのような人には、家族や友人など親しい人の存在がモチベーションアップのために大きな効果をもたらします。

面会を重ねてもらうことで「自分はこの人たちのために頑張らないといけない」と思ってもらえるようになります。ただし家族等も都合があると思いますので、なかなか会いに来れない場合は手紙などをお願いするのも良いでしょう。

他の人の為にもなっていることを伝える

その人の存在が、他の人のためにもなっていることを伝えてみましょう。「○○さんが頑張っている姿は、他の人も元気にしていますよ」「○○さんが参加してくれているから、作業がとてもはかどります」などと伝えることで「自分は役に立っている」と感じてもらうことができ、モチベーションアップにつながります。

目的を伝える

作業療法は手のリハビリを行うからといって、手の筋力トレーニングなどを行うわけではありません。手のリハビリの例で言えば、パズルやちぎり絵などという形で行うので、直接的な関連が分かりづらいところがあります。

なので、実際に行っているリハビリと、リハビリが必要な部位との関係が理解できずに「なんでこんな必要ないことをやらされるんだろう」と思いモチベーションが上がらない人もいます。

なぜこの作業がリハビリになるのか具体的に伝える

必要性がうまく理解できないことでモチベーションが上がらない人に対しては、しっかり理論だててその必要性を説明しましょう。

例えばうつで仕事を離れているものの、復職を希望している人が「IT関連の仕事なのに、どうして全く関係がない畑仕事ばかりさせられるんだろう」と考えているとします。

このような場合「畑仕事をすることによって、実際の仕事に戻った時に体力がもつかどうかの確認、それから復職後うつを再発しないために、仕事に対する働き方の確認などを行っている」と言えば納得して作業にあたってくれる人もいます。

まとめ

患者のタイプは様々ですから、この方法であればどんな患者でもモチベーションが上がるという方法はありません。しかしモチベーションアップの方法は今回の記事で挙げたように数多くありますので、いろいろ試してみるとその患者に合うモチベーションアップの方法はきっと見つかります。

受け持っている患者のモチベーションが低い場合はもちろん、リハビリを頑張ってくれてはいるけど見込んだだけの効果が上がらない患者がいる場合も、今回挙げた方法を参考に対応してみると良い成果を得られるかもしれませんよ。