病院やクリニックなど身体領域での作業療法士の役割とリハビリ方法

病院やクリニックなどでは麻痺や四肢切断によってリハビリを必要とする人が沢山おり、そのような人を対象に作業療法を行っていきます。しかしこの時、他の病院などで作業療法を行っていたからといって、全く同じ内容でリハビリを進めていくと的外れな作業療法になってしまう可能性があります。

作業療法士の仕事は、誰を対象とするかによって役割やリハビリの内容を変えていかなければなりません。そこで今回は、そのような身体障害領域における作業療法士の役割と、実際に行うリハビリ内容について見ていきましょう。

身体障害の作業療法

病院やクリニックにおける身体領域の作業療法では、体の機能が失われたり、低下することによって、病気の発症前のような生活を送る事が難しい人を対象にリハビリを行います。

身体の障害は心やその他の様々なことに影響を与えます。ですから、身体領域のリハビリでは身体面だけではなく、心理面、他にも様々な事に目を向ける事が作業療法士には求められます。身体の障害は、心や仕事などにも影響を与えます。身体領域のリハビリでは、そのような部分にも目を向ける事が作業療法士には求められます。

身体機能の向上

身体に障害を負った患者に対して作業療法士は、当然のことながら身体面のリハビリを行います。四肢切断や病気によって体の機能が失われてしまったことにより、日常生活に支障が出ている人を対象にリハビリを行います。

心理面のサポート

身体に一生残る可能性がある障害を負った場合、それは精神的にも大きなストレスを与え、リハビリの進行具合に影響を与えることもあります。そのため身体障害を抱えた患者に対しては、心理面のサポートも行います。

復職の援助

身体的にできない事が増えれば、多くの場合仕事にも影響します。働けるかどうかは特に家庭がある人には深刻な問題です。作業療法士は患者さんが再び職場に復職できるように作業療法を行うとともに、場合によっては雇い主である企業との間に立って援助を行っていきます。

対象疾患

身体領域の患者には様々な人がいますが、その中でも特に関わる事が多い疾患を挙げておきます。実際に働き始める際や、実習の時にも関わる可能性が高い疾患です。事前に症状や特徴などをしっかり頭に叩き込んでおきましょう。

筋ジストロフィー

筋肉が壊死と再生をくり返し、徐々に筋力低下、筋萎縮していく遺伝性の病気です。多くは5歳前後で頻繁に転ぶなどの症状が表れ始め、10歳の頃には多くの場合車椅子生活になります。20~30歳で心不全や呼吸困難によって亡くなるケースがほとんどですが、症状の型によっては全く違う予後を辿ることもあります。

脊椎損傷

脊椎を損傷した場合、損傷する部位によっては体の各部位に麻痺を生じる場合があります。交通事故などによって下半身不随になってしまうケースや、高所から転落した際の頚部骨折により四肢麻痺となってしまうケースなどがあります。

四肢切断

仕事中の事故や糖尿病の合併症によって、手や足を切除する事になってしまった患者さんも少なくありません。体の不自由だけではなく、精神的な問題も併せて発症しやすいため、いくら身体領域といえど、その精神面もよく見ながら対応する必要があります。

関節リウマチ

自己免疫機能の異常により生じる病気です。女性に特に多く、徐々に関節が変形していくことにより日常生活に不自由をきたします。骨粗鬆症も併発しやすいため、骨折によって歩行が難しくなるなどのADL低下の予防も考える必要があります。

脳血管障害

脳出血や脳梗塞などの脳血管に関する病気です。その後遺症として体に麻痺が残っている患者さんが多く、身体機能を取り戻すために作業療法を行うことになります。高次機能障害や失語症なども併発している場合も少なくないので、他職種との連携が欠かせません。

身体障害のリハビリ方法

体の機能が失われると、歩くことや服を着ることなど、今までと同じような日常生活を送る事が急に困難になるので、身体領域における作業療法では特にその点に重点を置きながらリハビリ計画を立てていく必要があります。

以下に「対象疾患」でも挙げた、筋ジストロフィー、四肢切断、関節リウマチの人に対して行うリハビリの例を挙げています。参考にしてください。

筋ジストロフィー

筋ジストロフィーは進行性の病気であるため、多くの場合失われた機能の回復は望めません。しかし何もしなければ関節の拘縮などが表れ、早期に日常生活における介護が必要となります。そのため作業療法では、症状の進行具合を緩やかにするためのリハビリを行います。

ボール投げや絵画

筋ジストロフィーによって歩けなくなることは早いですが、手の機能は症状が進行しても比較的長く保たれます。そのためボール投げや絵画など、上肢を使う活動によって関節の拘縮を未然に防ぐと共に、進行していく症状からの不安の解消を図ります。

上肢を使用する日常動作訓練

しっかり訓練を行えば上肢の機能はそれなりに維持されるので、食事や衣類の着脱など、手を使う様々な日常的な動作を、時に装具も使用しながらくり返し訓練していきます。

四肢切断

四肢を切断した場合は、残っている部位を十分に活用し、失った肢体の機能を補えるように訓練します。また、四肢切断は見た目にも患者さんに与えるインパクトが強いため、精神的な影響を強く与えます。その点をクリアしなければリハビリすら行えない状況もあるので、作業療法士は精神的なフォローも行っていく必要があります。

心理面のフォロー

四肢を切断した患者さんは、精神的に塞ぎ込みがちになるケースが多く見られます。しかしまずは心理的にリハビリを行う気分になってもらわないと、何も始まりません。

そのため状況によっては身体的リハビリよりも先に、日常的に患者さんと関わり、悩みを聴くことによって心を開いてもらうことから始めます。日常的に会話ができるようになったら、その中から自然にニーズを見つけ、それをうまく活用してリハビリの意欲を引き出しましょう。

利き手交換

切断したのが利き手だった場合、利き手交換を行います。字を書く、食事をするなどの行為を、簡単なところからくり返し行います。

義足による歩行訓練

下肢を切断し、義足を使用した歩行ができると判断された場合は、義足による歩行訓練も行っていきます。まずはトイレに行くなど簡単なところから始め、慣れてきたら階段の昇降なども行っていきます。

復職のための作業訓練

まだ働き盛りである場合は、職場復帰のための支援を行うこともあります。仕事上どんな体の機能が必要であるかを検討し、その機能獲得のための訓練を行っていきます。また、継続的に本人や雇用主とも連絡を取り合い、実際に復職した後に生じた新たな課題などにも向き合っていきます。

関節リウマチ

関節リウマチは関節が徐々に破壊されていく病気です。そのためまずは関節を守ること、それから症状の進行によって難しくなった事を如何にして再びできるようにするか、という点に的を絞ってリハビリを行っていく必要があります。

関節の保護

関節は使えば使うほどすり減っていくものです。特にリウマチ患者はその関節への負担が著しく、重いものを持ったり、無理な方向に曲げたりして強い負荷をかけるとさらに症状が悪化します。それを防ぐために、料理の時の包丁は柄が太い物を選ぶ、物を持つときは指だけで持たない様にするなどの、動作の指導を行います。

自助具の開発と使用訓練

関節リウマチが進行していくと、徐々に細かい動作などが難しくなります。そのため動作を補助するための自助具を作業療法士が開発していくことも珍しくはありません。また、自助具の使い方を訓練していくことも、作業療法士の役割です。

リハビリを行う実施機関

身体領域はリハビリ職としての色が強い分野であるため、この分野を目指して作業療法士になりたいと考えた人も多いことでしょう。作業療法士として身体領域で働きたいと思ったら、働く場所を考えなければいけません。

病院

中・大型のリハビリ部門を備えた病院や、整形を専門とした病院などでは特に身体領域の患者と多く関わる事ができます。規模が大きければそれだけ多くの先輩作業療法士とも関わる事ができるのでいろいろ教えてもらう事ができるでしょう。

福祉施設

介護老人保健施設やデイケアでも身体領域の利用者と関わる事ができます。しかし高齢者が多くなるので老年期障害に関する知識も必要であることや、作業療法士が自分一人しかいないというケースも多いので、病院などで経験を積んだ上で門を叩く事が望ましいでしょう。

まとめ

体の機能を失うことは、それまで当たり前に行えていた事が急にできなくなる事を意味します。食事、洋服を着る、歩く、字を書くなど、日常生活を営んでいく上で欠かすことのできない機能を失うことは、言わずもがなその人の一生に影響を与えることです。

その一生を左右する動作を再び取り戻す事ができるかどうかは、作業療法士の知識と技術にかかっています。身体領域で働く場合は身体だけでなく、心理面やその他の面も見ながら、あらゆる角度からリハビリ計画を考えていきましょう。